リーンの翼を見ました。
作品から感じる熱量がすごくて、思わず惹かれてしまいました。
声優の熱演
最初に言わせてほしいのが、声優陣の熱演です。
私がリーンの翼に惹かれた9割はここにあると言っても過言ではありません。
まず、エイサップの演技が一番好きです。
いや、演技というのは語弊があるかもしれません。
これは他のキャラクターも同じですが、声優が「演じている」のではなく「そのキャラクターになっている」という感覚です。
アニメのキャラクターではなく、あの世界に生きている「生の人間」として、まさしく「生命のオーラ」を感じるんですよね。
なぜそう思ったのか?
正直、それはうまく言語化できません。
でも、皆さんも同じような経験があるはずです。
「なぜだかわからないけど、心を動かされた」
「なぜだかわからないけど、強く惹かれる」
そうはいっても、これだけではあまりに抽象的なので、拙い言葉ですが自分なりに感じたことを書いてみようかと。
エイサップは自分の考えや意志というものをしっかり持っていて、それが声に表れていると思います。
アニメを見ていただければわかると思いますが、エイサップってキッパリものを言うんですよね。
相手が異世界の王であろうと物おじせず、堂々と自分の考えをぶつけられる男。
それが声にも表れていて、一語一語をビシッと締めているんですよね。
思考している時や、疑問を口にする時でさえナヨッとした感じがしない。
現実の人間だったら大袈裟すぎて「何この人?」ってなる勢いですが、あの世界ではスッと馴染んでいます。
この大袈裟な物言いはサコミズ王も同じです。
エイサップからは若者らしい勢いを感じますが、サコミズ王からは壮絶な人生を感じさせる「決意と凄み」を感じます。
言葉の端々から、積み重ねた人生の重みを感じました。
これは小山力也さんでなければ「サコミズ・シンジロウ」というキャラクターは成立しなかっただろうと思わせられるものでした。
エイサップとサコミズ王の演技の違いを私なりに表せば次のようになります。
ポイント
エイサップ:若者らしい勢い。良くも悪くも過去の経験からくる重みを感じず、目の前のことだけを見ている感じ。
サコミズ王:決意と凄み。発せられる言葉から「過去の経験の結果、今これを成す。」という信念を感じる。
エイサップとサコミズ王の話ばっかしてしまいましたが…実はリュクスの演技もめちゃくちゃ好きです。
正直、リュクスの演技は他の声優に比べると上手ではないと思います。
抑揚がなく、若干棒読みっぽくも聴こえます。
ただ、それが逆に良いと思っています。
シンプルに考えてほしいんですが、リュクスくらいの年の女の子が、まるで舞台役者のように振舞っていたら不自然じゃないですか?
だから、リュクスを「演じる」のではなく、リュクスという「あの世界に生きる少女」を描く上ではあの演技が最高だと思っていますし、大好きです。
父や母の野心を止めたい強さと、等身大の少女らしい弱さ。
一見棒読みにも感じるそれが、ある意味でリアルに感じました。
これは同じく富野監督のキングゲイナーに登場するサラやアナ姫にも同じことが言えると思っています。
アニメのキャラクターとしてみると棒読みにも感じるけど、その世界に生きる人間としてみるとリアリティに溢れている。
これは本当にすごいことだと思いましたね。
リュクスいいよね
真面目な話をしてしまったのでリュクスいいよねって話をします。
まず、声がいいよね。
「いや、さっき声の話したばっかやん!」
というツッコミに対しては「そうでもあるがぁぁぁぁぁ!」としか言いようがないのですが、良いもんは良いし何回でも言いたいのも事実。
嶋村さんの「気の強い凛とした女性」を感じさせる声がいいんですよ。
リュクスの場合、気負ってる感じもあって、それがまたいい。
これは同じ富野作品の姫キャラであるアイーダさんにも通ずるものがありますね。
これが素敵ポイントなんですが、自分の意志を強く持ち、主体的に行動できる女性でありながら「守ってあげたい」と思える魔力。
これがリュクスの魅力じゃないかなと思います。
私は1話の時点で落ちましたね。
いきなり海から現れて、ラッキースケベして、空中散歩までして…。
こんなドラマティックな出会いをして惚れない方がおかしいと断言できます。
しかも一生懸命で、でも少女らしい弱さもあって、嶋村侑声なんでしょうが!
そりゃ惚れるよ。
結構表情も豊かで、その時のリュクスの気持ちっていうのが一目でわかるようになってる。
味方の艦に気づいたときはキラキラしてたし、ドヤ顔も見せてくれた。
でも、リーンの翼で空中散歩した時は不安な気持ちを全面に推しだしていて、このギャップにやられたんですよ。
しかも不安そうな顔をしてると思ったらまたすぐ嬉しそうな顔をするし、ほんとに活き活きしてるんですよね。
でもまあ私が惚れたのは実はもっと前で、艦から滑り落ちてきたシーンなんですよね。
こんなにフェチを刺激されるシーンがあるだろうか?いや、ない。
特にエイサップの体に倒れ込んでいる時のお尻の突き出しっぷりや腰のくねりは女性特有の柔らかさを感じられ股間のオーラキャノンがハイパー化するんだろうが!
顔面をモニターに擦り付けながら見なさいと私は言いたい。
あと不安からか何回もチュッチュしちゃうところホント好き。
クセの強すぎる富野節
この作品、1話目にして富野節が強すぎます(笑)
一番最初に「お、富野節だなぁ」と感じたのは、エイサップがリュクスに蹴られた時のシーン。
「脚で顔を殴ったんだろうが!」
これは言葉通り、自分の顔を膝で蹴ったにもかかわらず謝ることをせず、今の状況を口にし続けるリュクスに対してのセリフです。
このやり取りには強い富野イズムを感じずにはいられませんでしたね。
しかも「蹴る」ではなく「殴る」という表現なのも面白いところで、印象深いです。
「顔への攻撃=殴る」というところからきてるんでしょうか。
確かに、「顔を蹴る」より「顔を殴る」の方がしっくりきますし、そう考えると「脚で顔を殴る」という表現はむしろ自然な気さえします。
もし自分がエイサップと同じ体験をしたら、咄嗟に出てくる言葉は「蹴られた」より「殴られた」かもしれません。
さて、1話の富野節といえば航空機でのシーンも外せませんよね。
「お前らどこから来た!?」
「上から来たんでしょうが!」
「そういうことじゃない!どこから来たんだと聞いてるんだ!」
このやりとりは思わず笑ってしまいました(笑)
いや、お互いの言ってることはわかるんですよ。
エイサップは何も嘘をついていないし、航空機のパイロットだってそんなことはわかってるんですよ。
でも、聞きたいのはそういうことじゃない!
そういうことじゃないんだけど、聞き方としてはやっぱり「どこから来たんだ!?」になってしまう辺りが、あの状況の不可思議さを表していて好きですね。
でもリーンの翼で一番好きな富野節は、やっぱり2話のあれでしょう。
「姫様に教わって、この名無しを動かしているんです」
「ナナジンと名付けたか!七福神の!」
これを聞いた瞬間、「ああ、これは富野監督じゃないとできない」と思いました。
だって、盛大な聞き間違いでしかないんですから。
なのに、あのサコミズ王の勢いで、それがまるで自然なことのように感じられてしまうのはとんでもないことです。
多分他の作品じゃこんなことできないと思うんですよ。
ギャグなのにギャグじゃない、ギャグじゃないのにギャグ。
このシーンが見れただけでリーンの翼を見てよかったと思える名場面でした。
もちろん他にもナイス富野節はありました。
例えば次のやり取り。
「鈴木君には政治を司る新しい聖戦士をやってくれ!」
「そんなことを言って、隙を作らせるのか!」
「そうでもあるがぁぁぁぁぁ!」
これはもう富野節の真骨頂といってもいいものでしょう。
特に好きなのは一行目の「鈴木君には政治を司る新しい聖戦士をやってくれ!」ですね。
この文章って、日本語としておかしいですよね。
私なりに文章を直すと、次のようになります。
「鈴木君には政治を司る新しい聖戦士をやってほしい!」
日本語しては正しい文章になったと思います。
でも、「勢い」がないんですよね。
ここでのサコミズ王は、言葉の上では「やってほしい」というお願い口調ですが、実際のところは「やれよ」という気持ちだったと思います。
そこで、日本語としておかしいのは承知の上で、勢いを重視した結果が「鈴木君には政治を司る新しい聖戦士をやってくれ!」なんだと思います。
あくまでもお願いしてるんだけど、「お前の答えは聞いてない」という有無を言わさぬ感じがします(笑)
あとは「コドールの褥は温かいよなぁ?」なんかも好きですね(笑)
より生物的なオーラバトラー
全然オーラバトラーの事に触れてませんでしたが、実はすごく好きなデザインです。
ここは好みが分かれると思いますが、私はダンバインよりも生物的なところが気に入っています。
今作のオーラバトラーって、「ロボットと生物の中間的なナニカ」だと思います。
ダンバインではあくまでも「昆虫をモチーフにしたロボット」という印象で、どちらかといえばヒロイックなデザインでした。
それがリーンだと、ヒロイックさとは逆にある「昆虫らしさ・生物らしさ」に振っているように感じます。
それはデザインだけでなく、1話の「いきなり地上界に出て、嫌がってる!」というオーラバトラーに意思があるかのようなセリフからもわかります。
余談ですが、ダンバイン、サーバイン、ナナジンを並べてみると、デザインのコンセプトが全く違うんだなというのが分かって面白いです。
オウカオーなんかは、名前の由来である「桜花」と蝶をモチーフとしたデザインがマッチしていて美しいですよね。
紫と桜花色の翅も見事で、ハイパー化した際には禍々しく、東京を守ろうとしたときにはステンドガラスのように美しく見えたのは面白かったです。
主題歌「My fate」から感じる魂
主題歌である「My fate」からは土屋アンナの魂を感じました。
静かな曲調から始まるんだけど、サビでは強い主張を感じるし、2番の歌詞以降は曲調が激しさを増しているのが特徴的な曲だなと思います。
これは私の勝手な妄想ですが、この静かな曲調から激しさを増していくところはサコミズ王の人生を表しているように感じました。
聖戦士として誇り高く戦った男が、徐々に激情に駆られていく、そんな物語を感じます。
こう思うに至ったのは曲調だけでなく、土屋アンナの力強く、そしてもの哀しい感情的な歌い方がサコミズ王の叫びのように感じられたからです。
また、一番最初の歌詞である「There's a story inside of me」「Many sadness inside my mind」を和訳すると、次のようになります。
「私の中に物語がある」
「心の中に多くの悲しみがある」
これは特攻隊として出撃したこと、そして仲間が散っていく中で自分だけが生き残ってしまった無念…。
そういった「サコミズ王」ではなく「サコミズ・シンジロウ」を表している歌詞なんじゃないかなと思うんです。
そしてこの歌詞の最後は次の言葉で締められています。
「Time will never stop, never」
時は決して止まらない。
オーラロードの中でサコミズ王が言った「過去は変えられない」、エイサップがサコミズ王へ放ったセリフ「死んでいった者は過去なんです!」を象徴するような歌詞です。
過去に執着していたサコミズ王が最後には現代の日本を原爆から守ったことを思うと感慨深いですし、その魂はエイサップに継承されたんじゃないかと思うと「時は止まることなく、聖戦士の世代交代が行われた」という風にも考えられ、リーンの翼の主題歌としてこんなに素晴らしい歌詞はないなと感じました。
リーンの翼が聖戦士のモノなら……我が想いを守れ…!!!
全6話と短いながらも、非常に見応えのある作品となっていました。
富野節のクセが強いこと、メッセージ性の強い作風であることを考えるとオススメはしにくいですが、素晴らしい作品なので1度は視聴してみてほしい作品です。